銀行による取引企業の格付け方法(その2)

~現在、一部の大都市圏を除いて土地等の資産デフレからの脱却ができていない地域がまだまだ沢山あります。
こういう状況下では、貸借対照表の左側にある資産価値が、年々目減りしていきます。
そのため資産を時価評価すると含み損が露呈し、債務超過に陥っていると言うことが多くあります。
そのため貸借対照表の右側にある借入金は次のような事情で相対的に重くなっており、企業経営の負担となっています。

①過当競争による販売単価の下落によって売上高が低下傾向にあり、企業業績が悪化し返済能力が低下している。
②借入金によって購入した資産の時価が下落によって、借入金残高を下回っている。

このような企業の多くは約定返済どおりにキチンと返済することが困難になっているのです。
銀行は、取引先の融資が不良債権化するリスクを回避するため、次の二つの着眼点によりチェックしています。

一つ目
取引先が必要な運転資金を貸借対照表から下記の計算式で計算し、
受取手形・売掛金+棚卸資産-支払手形・買掛金=必要運転資金
短期借入金と比較します。
必要運転資金 > 短期借入金
であれば、原則として資金バランスは問題なしと言うことになります。
※売上債権・棚卸資産・仕入債務は必ず時価ベースでなければなりません。
必要運転資金 < 短期借入金
の場合は、固定資産取得資金、赤字補填資金、長期借入金返済資金に短期借入金を 充当しているケースであり、資金バランスに問題ありと格付けの判断としています。
二つ目
融資先の借入金(運転資金を除く)とキャッシュフローとを比較して、借金過多の状況を検討します。キャッシュフローの計算式は、下記のとおりです。
経常利益 × 0.65 + 減価償却費 = キャッシュフロー
このキャッシュフローが正に債務返済能力を示す裏付に、何年間で実質長期借入金を返済できるか(債務償還年数)を格付けの判断としています。

債務償還年数の計算方法
(長短借入金-必要運転資金) ÷ キャッシュフロー = 債務償還年数
正常先 10年未満で返済可能
要注意先 10~20年未満で返済可能
要管理先 20~30年未満で返済可能
破綻懸念先 30年以上

以上のとおり、銀行は債務償還年数により貴社を格付けしているのです。

※ 実質長期借入金とは?
通常、借入金は短期と長期に分けられています。
その違いは返済期日が1年以内かどうかということになっています。
しかし、実際には資金の使途による区分と考えるべきものです。
短期借入金は、運転資金に充当する資金のための借入ですから、企業活動継続のために常に必要な借入金です。
返済期日到来の都度、借り替えするのが一般的(どの会社も普通に)です。
そのため、短期借入金は多少の上下はあるにせよ常に財務上存在します。
それに対し、長期借入金は文字通り設備投資に充当する資金のための借入ですから、 キャッシュフローによって返済期日に約定どおり返済することが必要な借入金です。
そのため、取引先借入金残高過大か否かの判断は長期のみならず、長短借入金から必要運転資金を除いたものを実質長期借入金と言います。


5段階評価の真実

銀行の格付け方法1

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